司法書士に依頼したいと考えている場合は、どのような点に注意して司法書士を選ぶといいですか?
私が考える佳い司法書士の条件は次のとおりです。ただし、全て満たしていてもダメな人もいれば、満たす項目が少なくても佳い司法書士がいると思います。最終的には面談してご自身で判断していただく必要があります。
完全に個人の感想ではありますが、幸いなことに、司法書士業界では、まともな人が多いと思うところではあります(「癖クセのある人も…以下略」)。しかし、私が見聞きする範囲内であっても、残念ながら同業者である私から見て、マズい執務をしている司法書士も散見さます。
この記事をご覧になっているということは、「司法書士を探しているけれども失敗したくない!」という方かと思います。そんな方々に向けて、私なりの注意点をまとめてみました。また、その他の士業を探す際の参考となるかもしれません。
なお、本記事では、「良い」ではなく、あえて人物のよさを表す「佳い」という用語を使用しています。
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初めての司法書士を探す方法
初めて司法書士を利用する方が司法書士にたどり着く方法としては、主に次の方法が挙げられると思います。
私が勝手に考えた良い点、悪い点をまとめました。
ご自身の知り合いや依頼している税理士からの専門家から司法書士を紹介されるケースです。
少なくともご紹介者のフィルターを通しているので、なんだかんだで安全性が高めの手段のような気がします。
GOOD POINT
・安心感が高い(紹介する側にも責任があるため)
・人間性に問題がない可能性が高い(紹介する側にも責任があるため)
BAD POINT
・価格比較がしにくい
・合わなかったとき断りにくい
司法書士の専門性が発揮され、手間のかかる部分を代行しているのであれば、価格が高いことは必ずしも悪いことではありません。
相場から高い事務所なのであれば、なぜこの価格なのかの説明を受けて、提供されるサービスと価格が見合っているかを判断してください。
なお、不自然に高額な報酬には紹介料が乗せられているケースもあります。司法書士が紹介料を払ったり、受け取ったりすることは禁止行為ですのでご注意ください。
家や土地をなどの動産を購入する場面で多くあるパターンです。
不動産業者さんから「お知り合いの司法書士はいますか」と聞かれて、「いない」と回答すると「ではこちらの司法書士はいかがですか」と提案されるケースです。
一部の売買契約などでは、「指定の司法書士に委任する」という条項があり、契約時には担当する司法書士が決定している場合もあります。もし、自分で司法書士を指定したい場合は、契約条項から除外してもらいましょう。
GOOD POINT
・安心感が高い(過去に同様の事例を大量に処理している可能性が高いため)
・同じような案件を多く担当しており、安全性が高い
BAD POINT
・価格比較ができないことがある(契約上、指定の司法書士がいる場合)
・合わなかったときでも断れないことがある(契約上、指定の司法書士がいる場合)
・紹介料が乗っている可能性が否定できない
前述のとおり、司法書士の紹介料の授受は禁止行為ですが、一般の方がそれを見抜くのは困難です。
インターネットの発達により、近年ではインターネットで司法書士を探す方も多くなってきました。
私自身インターネット経由で集客しようとして、この記事を書いているわけではありますが…
なお、司法書士業界は、ITだとかDXだとか、そういったものに弱い方が多いのも事実で、立派なホームページを持っているのは大手だけだったりします。
GOOD POINT
・比較・検討がしやすい
・報酬の相場がつかみやすい(近くの3つくらいの事務所の報酬を見ればだいたい把握できるでしょう)
・お近くの司法書士が見つけやすい(Googleマップなど)
・得意分野に特化した司法書士が見つかりやすい
BAD POINT
・力量は玉石混交
・自分で依頼する司法書士を判断しなくてはならない
ネットの海の中から皆さんの力で探し出すこととなります。
一部の市役所では、司法書士の無料相談を実施している自治体があります。自治体での無料相談会の特徴は次のとおりです。
GOOD POINT
・一定レベル以上の司法書士が派遣される傾向にある(愛知県の場合)
・相談が無料である(ことが多い)
BAD POINT
・信託などの特殊な分野だと、取扱いのない司法書士が派遣され、無駄足になることがある
・(おそらく)準公務員扱いのため、その場で委任できないこともある(利益誘導になる恐れがあるため)
・時間制限があり、時間を超えると強制終了となる
中規模から大規模な事務所では、独自で相談会を実施していることがあります。一方で小規模な事務所で巷で相談会をしているという話は聞いたことがありません。
私は大規模事務所に所属したことがありませんので、この項目は、私の推測で書いていますことを予めご了承ください。
GOOD POINT
・受任までのシームレス(スムーズ)な対応が期待できる
BAD POINT
・担当の司法書士による力量のばらつきがある可能性がある
・大規模事務所がゆえに、担当者を指名できない可能性がある
・他事務所との比較がしにくい
ほぼ依頼する司法書士が指定されている場合を除き、司法書士自身や司法書士事務所がどのような姿勢で執務に臨んでいるかをあなた自身で確認していただく必要があります。
次の項目では、私が考えるチェックポイントについてお話しいたします。
面談時に注意していただきたいこと
あなたは、司法書士と連絡をとり、相談をすることとなり、司法書士の事務所を訪問することになりました(または司法書士があなたの自宅を訪問することとなりました)。
個人の見解ではありますけども、実際の面談時に注意すべき点とあまり気にしなくてもいい点をまとめてみました。
重要度
残念ながら皆さんは法律のプロではありません。インターネットが発達した現代であっても司法書士との間には、確実に知識の差はあります。
なおインターネット情報で、明らかな誤りを見たことがありますので、鵜呑みにしないことをおすすめします(専門家のサイトであっても同様)。
そのため、皆さんが不明に思う点については、質問をしていただくことになります。専門家としてそのようなご質問に関して回答することは職務の一環であると考えます。個人的には質問されて嫌な顔をする司法書士は論外だと思います。
相談したものの「わからない」だとか「あやふやなので調べて回答します」という対応を司法書士にされるかもしれません。しかし、一流の司法書士でもわからないことはありますので、その後きちんと対処してもらえる方であれば問題ないと思われます。
もちろん、ご自身が期待する回答を得るために、同じ質問を何回もする方に対しては、当然司法書士であっても渋い顔をします。どれだけ粘っても司法書士が1回出した結論を覆すことは、(前提となる事情が変わらない限り)ほぼないです。
ちなみに私は1時間にわたり同じ質問を5回されたことがあります。6回目はさすがに遮りました。
重要度
実は、司法書士は相見積もりをとられたくない人種です。私の経験上、相見積もりを取られるということは、既に他事務所からの見積もりをすでに得ていて、その事務所との交渉材料として相見積もりを取るケースが多いように思います。
司法書士にとって「見積もりを作成する」ということは、今後起こりうることの全ての事態を想定し、その事案のみの見積書を作成します。
もし、見積もりが間違っていれば、司法書士が損を補填することもありますから、かなり神経をすり減らして作成しているはずです。
相見積もりを作成したのに断わられるということは、言ってみれば「依頼を受けオーダーメイド家具の設計図を書いたのにもかかわらず、『やっぱり止めます』と言われるに等しい」と思っている司法書士も多いのではないでしょうか?
このような事情もあり、事務所によっては(司法書士以外でも)、相見積もりは有料という事務所も聞いたことがあります。
あなたが安く登記を依頼したいのであれば、安さを売りにしている司法書士をインターネットで探し出して、最初から依頼する方が手っ取り早いと思います。もちろん選択は慎重に行ってください。
以上の事情から、相見積もりを嫌がることが佳い司法書士を選択する際の判断要素とはなりえないと考えます。
重要度
最も司法書士との間で問題となりやすいのは、費用の問題なのだそうです。
前項で相見積もりを取られることを嫌がることはお話ししましたが、受任の前に一切の費用に関する説明がないのも困りものです。
もちろん、司法書士としては事案の詳細が分かっていないと見積書の発行はできないので、いきなり支払総額を出してほしいと言われると困ってしまうのですが、一方で見積もりを出されずに事件に着手される事務所とは、後々トラブルになりやすいのではないかと思います。
可能であれば依頼を決める直前に見積書を取り、請求額が見積と異なる場合はその理由を尋ねてみるといいと思います。
司法書士の報酬は完全自由化されているため、「司法書士の費用が高すぎる」という理由だけでは、契約の解除や司法書士に懲罰を求めることは極めて困難でありますから、特に費用については注意していただきたいと思います。
重要度
このページをご覧のあなたにご質問します。「人を殴ると犯罪が成立しますか?」
「そんなの当たり前に成立するだろ!」と思われるかもしれませんが、私たちは当事者の状況や現場の様子などを尋ねるはずです。加害者の属性や状況によっては犯罪が成立しない場合があるためです。
相談者の皆様は、司法書士が必要とする情報をすべて提供していただけるケースは皆無と言っていいでしょう。そうすると私たち専門家は細かい事象の有無を確認する必要が出ますので、高確率で司法書士から質問があることがままあります。
例えば、相続の話でも、「相続が発生したんです」という相談一つとっても、亡くなった方が遺言を残しているか否かで今後の手続が変わりますので、私であれば細かく事情を聴取します。基本的に最初に聴取した内容を前提として執務を行うため、正確な情報を得ないまま事件処理に着手すると後々ガタガタになってしまうからです。
結論が一択である可能性もありますが、大半の場合は何かしら聞かれる可能性が高いです。
重要度
司法書士業務について、相談を受けるのは原則司法書士でなければなりません。
中には司法書士の監督下で補助者(無資格者等)に相談業務を任せる事務所もあるようですが、そのような事務所はお勧めしません。
理論的には、補助者が司法書士の指揮監督下で相談を受けることは可能なのでしょうが、そのためには補助者は相談中にいちいち司法書士に確認を取りに行くことになりますから、現実的ではありません。
能力の高い補助者の判断は、時に司法書士の回答を上回ることもあるでしょうが、それはあくまでも資格がない方の回答です。
どれだけサーキットでのドライビングテクニックが秀でていても、運転免許がなければ公道を走れないことと同じことです。
そのような法令や法令の精神を遵守しない事務所はお勧めできないと言えます。
なお、司法書士登録をしていれば、その事務所の代表が相談に従事していなくても問題ありません。
目の前の人物が司法書士であるかどうかを確かめる方法は、「司法書士さんですか?」と聞いてみるのが一番です。補助者などの非登録者であれば「違います」と回答するはずです。
もし、「司法書士です」と回答した人の名前を司法書士会ホームページの検索で出てこない、すなわち虚偽の回答をされた場合は、速やかにその事務所とは距離を取りましょう。間違いなく良いことは起こりません。
重要度
皆様の相談をうかがっていると、「こういう方法もありそうだな」と考えることもあります。
私は、複数の選択肢がある場合は、それらを全て提示しております。時には「何もしない」という選択肢を提示する場合もあります。
どのような選択をするか(もしくはしないか)については、依頼者の方の価値観によるところが大きいので、私のスタンスとしては、メリットやリスクを説明した上で、依頼者の方にお任せしています。そのうえで何もしないという結論を出される方もいらっしゃいます。
しかしながら、単一の選択しかできない事例もあり、複数案を提示できないケースもありますので、この基準は全ての事案で適用できる基準ではありません。
以上が佳い司法書士を選ぶ目安です。
人生でそんなにないことだから…
あなたの人生で司法書士と関わる場面と言うのは、会社経営者でもなければ、そう多くはないかもしれません。
しかし、司法書士がかかわる場面は、しばしば人生の重要なターニングポイントであったりします。
私は、そんな人生のターニングポイントで、皆様に嫌な思いをしてほしくないと思っています。
以上で色々とお話ししてきましたが、司法書士を指名するときは、最低限「司法書士」を指名してください。
「何を当たり前のことを!」と言われるかもしれませんが、世の中「自称専門家」は結構多いようで、私も「自称専門家」にぐちゃぐちゃにされた状況を立て直す作業に従事したこともあります。
そうなると最初から専門家に依頼しておいた方が手間も費用も安くなることがほとんどです。
当ブログでも再三にわたり警鐘を鳴らしているとことではありますが、どれだけ費用が安かったりしても、自称専門家には依頼しないよう強くお勧めします。
最初は費用が安くても、なんだかんだ理由をつけて、最終的にむしり取られるケースも見聞きしています。
もちろんひどい専門家もいるわけですが、自称専門家よりも比較するまでもなく安全性は高まります。
私が聞いた話なのですが、いまだに高圧的な態度の司法書士が存在するそうなんです。そのような司法書士は既に淘汰されていると思っていましたが、時々いるそうです。
私はかつての上司から「司法書士はサービス業である」と口酸っぱく言われてきました。このような認識が薄い司法書士に依頼すると、仕事は確実にするとしてももしれませんが、きっといやな思いをされる可能性が高いのではないでしょうか?
ちなみに一般の方が「雑だな」と感じる司法書士は、同業者から見ると「かなり雑」であることが多いですので、避けていただく方が良いのかもしれません。
司法書士選びのみならず、最終的には「その人を信じられるか」にかかってくると思います。
残念ながら佳い司法書士選びは難しい面が多くありますが、この記事を参考にしつつ、何とか信頼できる司法書士にたどり着いてほしいと思います。本記事がその一助になりましたら本望です。