遠方に登記識別情報を保管している場合で、その保管地が感染症の拡大地域であり、本人にも持病等によりハイリスクであるため取りに行きたくない場合は、本人確認情報を作成する正当事由となるのでしょうか?
担当司法書士が正当な事由であると判断すれば、本人確認情報を作成することができます。
また、私自身も過去に正当な事由があると判断し、登記申請をしました。
本人確認情報とは
本人確認情報とは、登記の際に添付が求められている登記識別情報または登記済証が提供できない場合の代替手段として、司法書士/土地家屋調査士/弁護士が不動産登記法第23条の規定に基づき作成し、法務局に提供するものです。
1 登記官は、申請人が前条に規定する申請をする場合において、同条ただし書の規定により登記識別情報を提供することができないときは、法務省令で定める方法により、同条に規定する登記義務者に対し、当該申請があった旨及び当該申請の内容が真実であると思料するときは法務省令で定める期間内に法務省令で定めるところによりその旨の申出をすべき旨を通知しなければならない。この場合において、登記官は、当該期間内にあっては、当該申出がない限り、当該申請に係る登記をすることができない。
(2項、3項省略)
4 第1項の規定は、同項に規定する場合において、次の各号のいずれかに掲げるときは、適用しない。
1 当該申請が登記の申請の代理を業とすることができる代理人によってされた場合であって、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第1項の登記義務者であることを確認するために必要な情報の提供を受け、かつ、その内容を相当と認めるとき。
2 当該申請に係る申請情報(委任による代理人によって申請する場合にあっては、その権限を証する情報)を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録について、公証人(公証人法(明治41年法律第53号)第8条の規定により公証人の職務を行う法務事務官を含む。)から当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めるとき。
正当な事由の存在
登記義務者が登記識別情報を提供しない場合で、登記申請を受けてもらうためには、「正当な理由」が必要となります。
正当な理由として認められるのは、不動産登記事務取扱手続準則第42条に掲げてあります。
この中で「遠方に登記識別情報を保管している場合で、その保管地が感染症の拡大地域であり、本人にも持病等によりハイリスクであるため取りに行きたくない場合」については、5号の「登記識別情報を提供したとすれば当該申請に係る不動産の取引を円滑に行うことができないおそれがある場合(以下、「円滑な取引阻害」と言います)」に該当し、登記識別情報を作成できるのかが問題となります。
法第22条ただし書に規定する登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合とは,次に掲げる場合とする。
1 登記識別情報が通知されなかった場合
2 登記識別情報の失効の申出に基づき,登記識別情報が失効した場合
3 登記識別情報を失念した場合
4 登記識別情報を提供することにより登記識別情報を適切に管理する上で支障が生ずることとなる場合
5 登記識別情報を提供したとすれば当該申請に係る不動産の取引を円滑に行うことができないおそれがある場合
第22条 登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第1項、第2項及び第4項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。ただし、前条ただし書の規定により登記識別情報が通知されなかった場合その他の申請人が登記識別情報を提供することができないことにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。
円滑な取引阻害のおそれとは?
下記参考文献によると、「『登記識別情報を提供したとすれば当該申請に係る不動産の取引を円滑に行うことができないおそれがある場合』が正当事由に追加された(不動産登記事務取扱手続準則42条1項)。これにより、登記識別情報を提供するかどうかについては、実質的に登記義務者の判断で決められるようになり、依頼者が本人確認情報を選択することができるようになった」とされています。
また、該当物件があまりに多く登記識別情報を申請書に反映させることが手間である場合にも、この「円滑な取引阻害」と言えるらしいので、感染症が理由であればなおさらだと言えそうです。
QRコードリーダーを使って登記識別情報を入力する方法はこちら
そうなると、資格者代理人が「円滑な取引阻害」と考えれば本人確認情報を作成することができます。また、本人確認情報内に細かい事情を記載する必要もありません。
ちなみに、某法務局に照会したところ、円滑な取引阻害に該当し、本人確認情報を作成することは可能と言われていることをお伝えしておきます。
実質的に登記義務者と資格者代理人が決定することになりますから、専門家の責任は大きいと思います。