電話加入権についた質権を抹消するにはどのような方法があるのですか?
被担保債権を完済している場合であれば、次のような解決策が考えられます。
前編の記事はこちらです。
電話加入権に質権がついている場合はどうすれば良いか? その1原則的な方法です。
これは債権者と連絡を取って、完済したことに伴い、NTTに対して質権の抹消の手続きを取ってもらいます。
この手続き費用として債権者によっては10万円程度の手数料の支払いを求めるケースもあるようです(下記参考を参照)。もちろん、かなり昔の債権ということもあり、そのくらいの調査費用が必要なのかもしれませんが、価格の妥当性は不明です。
ただし、債権者に対し抹消費用を支払ったとしても、質権抹消の手続きを行うかは不明です。もちろん、債権者には抹消手続をする義務があるのですが、実際に抹消手続きをとるかどうかは不明というのが弱点です。
そのため、手数料支払いに応じるのであれば、質権抹消書類の交付と手数料の支払いは同時履行で行うことが条件になるかと思います。この場合、どのような書類を用意すれば良いかをNTT側と綿密な協議をしておくことが必要となるでしょう。
最も確実なのが、裁判手続により抹消することです。
裁判所の判決ですので、強制力を持って抹消登録手続きをすることができます。
裁判を行う上で、私が考えていたことを私見としてまとめておきます。
訴訟物
質権契約の終了に基づく質権消滅登録請求権?
※所有権に基づく妨害排除請求権ではなさそう
請求の趣旨
被告は、別紙目録記載の電話加入権に対してなされた別紙質権目録記載の質権設定登録の消滅手続きをせよ。
訴額
電話加入権の価額か?
※算定不能ということになると民事訴訟費用等に関する法律第4条の規定により、訴額160万円となるため、司法書士は代理できないということになります。
土地管轄
債権者の住所地(普通裁判籍)、質原簿のあるところ(特別裁判籍)
※当該債務を持参債務とみることができれば原告の住所地も候補となります(特別裁判籍)
なお、こちらのブログによると司法書士にも訴訟代理権がある簡易裁判所の管轄となる模様ですので、訴額は電話加入権の額ということでよさそうです。
電話加入権電話加入権質に関する臨時特例法第7条第1項では、被担保債権の弁済期の到来後3か月を経過した場合、催告の手続ののち、NTTの「職権」で消滅の登録をすることができます。
そのため、NTTに対してその職権の発動を求めていくことになりそうですが、あくまでも「できる」という規定なので、お願いするという形になり、強制力をもって消滅の登録をすることは困難かと思います。
なお、電話加入権質に関する臨時特例法施行令第5条では、弁済期の記載は登録原簿の必要的記載事項であるため、特に証明する必要はないものと考えています。
このブロックは、あくまでも私が「聞いた話」であり、その正確性を当職では検証できておりませんが、参考までに書いておきます。
電話の基本料金が引き落とされている口座の残高を0にして、数か月滞納させると、(おそらく)電話サービス契約約款第59条の規定により、電話のサービスが停止されます。
そうなると、電話加入者はその権利を失い、付従性の結果として当該質権も抹消してしまうというのです。
ただし、当該電話加入権を失うので、当然ながら当該電話番号は利用できなくなります。
また、債務不履行をすることになりますので、例えば携帯電話本体の分割払いができなくなるといったことやローンを組む際に不利益が発生するなどの不利益が発生する可能性は否定できません。
最も簡易な方法ではありますが、十分に注意しなくてはなりませんし、当職の職責上、積極的な債務不履行を推奨することは致しませんし、あくまでも聞いた話ですので、その正確性はよくわかりません。
当職はこの方法は推奨しませんが、参考までに記載しておきます。
なお、不動産登記とは異なり、電話加入権の解除をする場合であっても、質権者の承諾は必要ではありません。
質権者は、①NTTに対して代位弁済して当該電話加入権を取得する、②質権を実行して競売にかける、③そのままにするの3パターンしか方法はなく、NTTは①から③を選択させるため、催告をするだけでOKなのです。
参考文献
合田 淳一ほか著「電話を担保とする金の借り方」 税務新報社(1958年)
愛知県図書館に蔵書があります